ニオイコラム

ニオイがわかるのは、なぜ? 今さら聞けない『嗅覚』の秘密にせまります。

記憶と嗅覚の不思議な関係

2020年3月23日

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プルースト効果(現象)という言葉をご存知でしょうか。

フランスの作家であるマルセイ・プルーストの「失われた時を求めて」という小説の中で、主人公がマドレーヌを口にした時、その香りから幼少期の記憶がよみがえったことが描かれています。香りから過去の記憶がよみがえる現象を作者の名前をとって、プルースト効果(現象)と呼ばれています。

日本でも記憶と嗅覚の歴史は古く、源氏物語などにおいてニオイ(匂ひ)関する記述が多くあります。空蝉のニオイが染みついた衣を抱いて思いをはせる光源氏、その後空蝉のもとに返ってきた衣に染みついた光源氏のニオイに涙する空蝉。とても有名な一節です。

では、なぜ匂いを嗅いだ時にこのような現象が起きるのでしょうか?

1973年アメリカで行われた、視覚の記憶と匂いの記憶を比較した心理研究が参考になります。視覚の記憶は記憶直後の成績は良いものの、約4か月後の正解率は40%と時間が経つにつれて記憶が薄れていきました。一方、匂いの記憶は記憶直後の成績は視覚に及びませんが、1週間後の正解率は70%、なんと1年後の正解率は65%とほとんど変わらないのです。このことは「プルースト効果」を説明するうえでヒントになるでしょう。

また、「嗅覚」は、五感の中でも唯一「大脳新皮質」を経由せず、記憶をつかさどる「大脳辺縁系(海馬・偏桃体)」と直接つながっています。このことも、嗅覚と記憶の関係にも関わっていると考えられています。

記憶と嗅覚の不思議な関係。貴方もニオイを嗅いだ時、ふと思い出す、懐かしい思い出はございませんか?

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