嗅覚研究室

嗅覚のなぜ?を徹底研究!カグー博士の日々の研究をこちらで報告します。

ニオイを感じる仕組み

2018年5月12日

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空気中にただようニオイや食事中に感じるニオイなど、私たちの生活の中はニオイであふれています。そんなニオイを私たちはどのように感じているのでしょうか。

ニオイを感じる仕組み

ニオイを感じさせる物質は20万種とも40万種とも言われていますが、これらニオイ分子は私たちの鼻の中の【①嗅粘膜(嗅上皮)】に溶け込みます。嗅粘膜に溶け込んだニオイ分子により【②嗅細胞】が興奮し、電気信号へと変換、【③嗅神経】を伝わって脳の一部である【③嗅球】へと投射されます。嗅球から【④脳】の様々な部分へ伝達され、どのようなニオイなのか、好きか嫌いか?以前嗅いだニオイか?など、様々な情報が統合され処理されます。

 

①嗅粘膜(嗅上皮)とニオイ分子

嗅細胞を含む嗅上皮は粘液で覆われており、嗅粘膜とも呼ばれ、そこにニオイ分子が溶け込みます。ニオイ分子は、揮発性であることに加えて、わずかでも水に溶けるという特徴があります。嗅粘膜の大きさは人や年齢などで個人差がありますが、両鼻で約5㎠ほどと考えられています。

 

②嗅細胞と嗅覚受容体遺伝子の発見

嗅粘膜には嗅細胞がびっしりと並んでおり、その数は約1000万個あるとされています。ちなみにイヌでは2億個程の嗅細胞があると言われています。

嗅細胞から伸びた嗅繊毛という毛の膜に、ニオイ分子を取り込む構造を持った嗅覚受容体(嗅覚レセプター)が存在し、そこにニオイ分が吸着することで、嗅細胞が興奮、電気信号へと変換されます。ヒトの嗅覚受容体の遺伝子は約1000個、その内機能しているのは約400個とされています。

これらの嗅覚受容体の分子科学的な構造の発見により、Buck L.とAxel R.博士は2004年ノーベル生理医学賞を受賞し、今日の嗅覚研究の発展へとつながっています。

 

③嗅神経から嗅球へ

電気信号となったニオイの情報は嗅神経を通って脳の一部である嗅球へと伝達されます。この際、シナプスという神経同士の継ぎ目を介しません。

嗅球は6層構造でその中に約1800個の糸球体を持っています。糸球体は4つのゾーンに分かれており、嗅細胞からの情報を精緻化しているとされています。今後の研究が期待されています。

 

④脳の大脳辺縁系

嗅球からでた情報は脳の様々な場所に送られていくことが分かっておりますが、ここで注目したいのは、情動や記憶に関与している大脳辺縁系の偏桃体や海馬へ繋がっているという点です。五感の中でも唯一、嗅覚だけが大脳新皮質を経由することなく大脳辺縁系に直接アクセスしているのです。

 

まとめ

ニオイを嗅いでどんなニオイか?を考える前に、好き・嫌いといった感情が起きること、ありませんか?また、あるニオイを嗅いで昔の事を思い出すなんてことありますよね。

ニオイは他の感覚と同じように様々な過程を経て脳へとつながっていきますが、たどり着くまでの距離は短く、大脳辺縁系に直接つながっていることが特徴的です。このことからニオイは好き・嫌いといった感情、情動や記憶との関係が深いことがわかるかと思います。

 

【参考図書】

著書名 著者 出版社
嗅覚とにおい物質 川崎通昭 堀内哲嗣郎 におい・かおり環境協会
においの心理学 綾部早穂 斉藤幸子 フレグランスジャーナル社
味覚・嗅覚 山内恵二 朝倉書店
匂いとヒトの脳 外池光雄 フレグランスジャーナル社

 

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