嗅覚研究室
嗅覚のなぜ?を徹底研究!カグー博士の日々の研究をこちらで報告します。
フェロモンって何だろう?
2018年8月9日
嗅覚のお話をする上でよく聞かれるのがフェロモンのお話。
実に様々な生物がフェロモンを使ってコミュニケーションをしています。私たち人間はどうでしょうか?
そんな魅惑にあふれたフェロモンについて少し調べてみましょう。
フェロモンの発見
初めてフェロモンの存在に気が付いていたのは、ファーブル昆虫記でも有名な、フランスの昆虫学者ファーブルです。
その後、ドイツのブテナントは50万匹(当時カイコの生産が盛んだった日本からも集められたといいます。)のカイコガからたった6mgのフェロモンを抽出することに成功し、化学構造を決定したのです。
このフェロモンはカイコガの学術名にちなんで、「ボンビコール」と名付けられました。この発見により、ブテナントはノーベル賞を受賞しています。
様々なフェロモン
ヒトや一部のサルを除いて、様々な生物がフェロモンを使ってコミュニケーションをしています。その一部をご紹介します。
性フェロモン
そのニオイにより異性を見つけたり、生殖行動を起こさせたりするフェロモンです。
先のカイコガから抽出されたボンビコールは性フェロモンです。驚くことに、ゾウとカイコガという全く異なる生物が同じ物質を性フェロモンとして使っているのです。
警報フェロモン
ミツバチやアリなどの社会性の昆虫は、外敵に襲われたり、巣が危険にさらされたりすると、このフェロモンを出します。このニオイを嗅いだ仲間たちは逃げたり、集団で戦ったりするのです。
道しるべフェロモン
アリは餌場までの道のりにこのフェロモンを地面につけることで、仲間はその跡をたどって行きます。こうしてアリの行列が形成されるのです。
私たち人間にはフェロモンはないの?
フェロモンは主に鋤鼻器(じょびき)、別名ヤコブソン器官と呼ばれる場所で感じ取られます。
私たち人間は鋤鼻器を持っているのでしょうか?現在のところ答えはNo。
では、私たちはフェロモンを感じることはできないのでしょうか?
生後間もない新生児は目が見えませんが、ニオイで母親を識別することができ、逆に母親も自分の赤ちゃんをニオイで見分けることができます。
また、ドミトリー(寄宿舎)効果と呼ばれる現象があります。女性同士が何か月も一緒に住んでいると、月経の周期が同調するというのです。
好きな人はニオイで選ぶ?
配偶者選びにもフェロモンが関係していることを示唆する研究があります。ある遺伝子領域があり、その遺伝子は個人差が大きく、種の生存のために多様性が高いほうが良いとされています。
次のような実験があります。
男子学生に数日同じシャツを着てもらい、そのニオイが染みついたシャツを女子学生に嗅いでもらうのです。すると、女子学生は自分とはより異なる遺伝子領域を持つ男性のニオイを好むというのです。
私たちは知らず知らずのうちにニオイで様々な判断をしていることがわかりますね。
フェロモンの不思議
多くの生物がフェロモンを使って様々な活動をしていますが、現在見つかっているフェロモン物質は少なく、全く異なる生物が同じフェロモン物質を使っているのです。
また、私たち人間も知らず知らずのうちにニオイで様々な判断をしている可能性もでてきました。これからの研究を楽しみにしています。
参考図書
著書名 | 著者 | 出版社 |
嗅覚とにおい物質 | 川崎通昭 堀内哲嗣郎 | におい・かおり環境協会 |
興奮する匂い 食欲をそそる匂い | 新村芳人 | 株式会社技術評価社 |
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