嗅覚研究室

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異嗅症とは

2021年8月27日

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異嗅症(いきゅうしょう)とは

異嗅症は通常では生じ得ないニオイ、本来のものとは異なるニオイを自覚する疾患です。

患者さんは、異嗅症を
①どんなニオイも同じニオイに感じる
②本来のニオイを違うニオイを感じる
③ニオイがない環境でニオイを感じる
と様々な症状で表現されます。

海外では、「腐った肉か、焼却したゴミか、糞便のような酷いニオイの中で食事をする」といった報告もあるほど、かなりつらい症状でありQOL(Quality Of Life=生活の質)が相当に失われているだろうことは容易に想像できます。

異嗅症の特長

異嗅症は突然始まると言います。様々なニオイの刺激、例えば、タバコの煙や排気ガスのニオイや、くしゃみや鼻をかむなどの行為がきっかけで異嗅症が始まります。

異臭はほぼ1種類で、強いて言えば“焦げたようなニオイ”と表現する患者さんが多い一方、この世には存在しない非常に不快なニオイで他のことは何もできなくなるほどのニオイを感じているようです。

睡眠をとると起きた時には解消している、という特徴もあります。

異嗅症の治療

原因疾患が明らかである場合は、その治療をまず行います。しかし、疾患の内容や原因不明の異嗅症に対しての有効性を示した報告は多くはありません。生理食塩水やステロイド点鼻などで効果があっても一時的であることが多く、慎重な経過観察が必要です。

重症で高度にQOLが障害されるケースには、嗅神経切断手術など外科的治療が試みられることがありますが、あまり一般的な治療法とは言えないようです。その場合は嗅覚を永続的に喪失する覚悟が必要です。

不思議な嗅覚

異嗅症の発症についての機序は解明されておりません。また治療法についても様々な方法が検討されていますが、効果を一概に評価することはできない状況です。

それでも、嗅覚経路は生体においても神経再生がおこり、絶えず新しい細胞が組み込まれている神経路ですから、外科的手術を行ったにもかかわらず嗅覚が回復した事例もあります。

嗅覚の回復には時間がかかるかもしれませんが、嗅覚の未知なる可能性に期待を残しつつ、根気強く治療を続けることによって嗅覚を取り戻すことができるのかもしれません。

参考文献

AROMA RESEARCH №57(vol.15/No.1 2014)
日医雑誌 第142巻・第12号(2014年3月)

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