嗅覚研究室
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勘違いしてはダメ!“感冒後嗅覚障害” 鼻に異変を感じたら早めに受診を!
2016年2月6日
監修:東京大学医学部付属病院 近藤健二先生
風邪(急性上気道炎)をひいた時、ごはんの味がわからなくなった。何を食べても味がしない。といった経験はありませんか?
実はそれ、嗅覚(きゅうかく)障害なんです。 風邪をひいている間だけ起こる、一時的な嗅覚障害は、風邪が治るにつれて回復していきますが、まれに、風邪が治った後も、味がわからない・・・ニオイがしない・・・といった症状が続くことがあります。 その症状を“感冒後嗅覚障害”と言います。
どのような症状なのか?
“感冒後嗅覚障害”とは、どのような症状なのでしょうか?
感冒後嗅覚障害では、ニオイが薄くなった、ニオイがしないという嗅覚の症状のほかに、食べ物の味がしないという症状が起こります。 実際には舌の表面で感じる味覚は働いているのですが、わたしたちが「味」と感じているものは実は味覚と嗅覚の合わさったものです。 感冒後嗅覚障害ではそのうちの嗅覚が低下してしまうため、あたかも味がなくなったような感じがします。 これを「風味障害」と呼びます。
また本来のニオイとは異なるニオイを感じたり、何を嗅いでも同じニオイに感じるという場合もあります。 これを「異嗅症」と呼びます。 そのようなニオイは多くの場合焦げ臭いニオイです。 異嗅症は感冒後嗅覚障害が起こってすぐ出る場合と、数ヶ月たってから出る場合があります。 風邪が治った後もずっと、「ニオイ、味がわからない」「いつもと違うニオイを感じる」などの症状がある方は早めの受診をおすすめします!
診断が難しい病気
感冒後嗅覚障害は、風邪が引き金となって、嗅粘膜や嗅覚伝導路にウィルスが感染し、組織を傷害し発生すると考えられています。 内視鏡の検査などでは異常を認めないことが多く、患者さんが感じる鼻の異変が頼りです。 「風邪が治ってもニオイがしない」といった症状の訴えが決め手となります。
治療方法は、特効薬といえる薬物治療はありませんが、日本では、亜鉛製剤や漢方、ステロイド、ビタミン、代謝改善薬など様々な薬剤が使用されています。 また最近の研究でニオイを積極的にかぐトレーニングが嗅覚の改善に役立つことがわかってきました。
発症はなぜか女性が多い?
風邪が治った後もずっと続く鼻の異変“感冒後嗅覚障害”は、珍しい病気ではありません。 嗅覚障害の原因、3大原因疾患と呼ばれているうちのひとつです。 嗅覚外来を受診される患者さんの約20%が、“感冒後嗅覚障害”で受診されます。 ちなみに、3大原因疾患の他のふたつは、“慢性副鼻腔炎”“頭部外傷”です。
“感冒後嗅覚障害”を発症する患者さんは、なぜか、中高年の女性が多いそうです。 いまのところその原因はわかっておりません・・・。 そして、女性の発症率は、なんと男性の2~4倍と、言われています。
女性のみなさん、風邪の後はお気をつけくださいね!
鼻に異変を感じたら早めに受診して!
“感冒後嗅覚障害”は、早期発見、早期治療が大事です。 鼻に異変を感じたら、早めに医療機関を受診されることをおすすめします。 “感冒後嗅覚障害”は、全ての方が回復されるわけではありませんが、治らない病気ではありません。 治療を継続することで、治る確率は高くなります。
長い治療の中で改善することもありますので、根気よく治療を続けることが大切です。
監修者プロフィール
近藤健二先生
東京大学医学部 耳鼻咽喉科教室 講師 / 日本耳鼻咽喉科学会専門医
専門分野:鼻科学/嗅覚医学/顔面神経疾患/内視鏡下鼻副鼻腔手術
所属学会:日本耳鼻咽喉科学会/日本鼻科学会/日本顔面神経学会
日本耳科学会/Association for Research in Otolaryngology Active Member
日本味と匂学会
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