嗅覚研究室
嗅覚のなぜ?を徹底研究!カグー博士の日々の研究をこちらで報告します。
ニオイがわからないと困ること
2019年4月16日
私たちが何気なく嗅いでいるニオイ。ニオイがわからなくなることで、困ることとは何でしょうか?私たちの生活はどのように変化するのでしょうか?
金沢医科大学で行われた、嗅覚障害の患者さんを対象にしたアンケート調査を参考に一緒に考えていきましょう。
第1位:食品腐敗に気づかない
皆さんは「この食べ物は食べられるかどうか?」をどのように判断しますか?食べる前にニオイを嗅いで判断していると思います。賞味期限のありなしに関わらず、腐ったニオイや酸っぱいニオイがしたり、今までに嗅いだことのないニオイがしたら警戒しますよね。
ところが嗅覚が低下してくると食べ物が腐っていることに気付きにくくなります。口にしてみて初めて変な味がすることに気がつくのです。さらに嗅覚が衰えると味覚も衰えますので、変な味かどうかも分からなくなってしまうのです。
食事は毎日の事ですし、腐った食べ物を食べてしまうことで体調を崩してしまうこともあるでしょう。とても重要な問題です。
第2位:ガス漏れに気づかない
ガスのニオイを嗅いだことはありますか?
ガスは本来無臭ですが、気が付かないと命の危険につながりますので、危険を知らせるニオイとして研究されたニオイが付けられているのです。
ところが嗅覚が低下すると、ガスコンロの火が消えていたり、ガスストーブの管が外れた時、ガス漏れに気がつきません。ガス漏れに気がつかないと爆発など重大な事故につながるので大変危険な問題です。
近年はオール電化の家も増え、ガスのニオイを知らないという若者も増えてきているようです。
第3位:食事がおいしくない
食べ物や飲み物を鼻をつまんで口にしてみてください。どうでしょう?味がしないと思います。私たちが想像する以上に、嗅覚は味覚に深くかかわっているのです。
嗅覚が低下すると味覚も衰えてくるため、何を食べても美味しくなく微妙な風味を感じられなくなってしまいます。
第4位:調理の味付けが変化
前項と同じように食事に関する困りごとです。
嗅覚が低下すると味覚も衰えてしまい、どのような味かわからなくなり、食事がおいしくなくなってしまいますが、それは調理にも影響してきます。調理の時の微妙な味付けが難しくなってしまうため、いつもと違う味付けとなってしまいます。
塩や砂糖を入れすぎてしまうことで、健康に悪影響を起こしてしまうこともあるでしょう。
第5位:煙の感知ができない
ガス漏れに気が付かないことに似ていますが、ニオイに気付かないと、鍋などを空焚きして立ち上がる煙に気付くのが遅れてしまいます。
消防庁の調査によると、住宅火災による犠牲者は高齢になるほど増加しているそうで、火災が起こっているのに逃げ遅れてしまった人が多いのは、嗅覚障害によってニオイがわからなくなってしまったことが原因の1つかもしれません。
生活の質:クオリティ オブ ライフ(quality of life、QOL)
そのほかにも、ニオイがわからなくなると、どんな生鮮食品を買ったらよいかわからないとか、香水や消臭剤の量がわからないなどといった不安があるといいます。ニオイがわからなくなると不安になり、自信を失い、うつ状態になる恐れもあります。
私たちが何気なく嗅いでいるニオイ。普段はあまり気にしていないかもしれませんが、ニオイがわからなくなると私たちの生活に様々な影響がでてくるのですね。
腐った食べ物を口にしてしまったり、ガス漏れに気が付かなかったりといった命の危険にも関わっています。また、毎日の生活に欠かせない食べ物が美味しくないと、クオリティ オブ ライフ(QOL、quality of life)とよばれる生活の質が低下し、豊かな生活がおくることが難しくなってしまいます。
ぜひ嗅覚をお大事にお過ごしください。
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