嗅覚研究室

嗅覚のなぜ?を徹底研究!カグー博士の日々の研究をこちらで報告します。

嗅覚障害ってどんな病気で起きるの?

2018年10月19日

マスクと薬

嗅覚障害が起きる疾患についてまとめました。

やや専門用語が多く難しく感じるかもしれませんが、私たちと一緒に学んでみませんか?

 

嗅覚障害の分類①

嗅覚障害は大きく、「量的障害」と「質的障害」に分けることができます。「量的障害」とはニオイの感じ方が弱くなったり、全く感じなくなったりすることを言い、医療機関を受診される方はこの量的障害がほとんどのようです。

一方、「質的障害」とは異嗅症に代表されるような、ニオイが今までとは異なって感じたり、どのニオイも同じニオイに感じたりといった症状があります。

 

嗅覚障害の分類②

嗅覚障害をもう少し専門的に発生部位などで分類すると、下記表のように3つに分類することができます。

嗅覚障害分類2

 (味嗅覚の科学2018年163p改変)

気導性嗅覚障害とは鼻づまりなどで空気中のニオイ分子が嗅粘膜までたどり着かない為にニオイが分からなくなります。

嗅神経性嗅覚障害は感冒(風邪)や一部の薬物などによって細胞や神経の異常によって起きるものです。

中枢性神経障害は嗅球から上位の嗅覚中枢、いわゆる脳の障害であり、神経変性疾患(認知症やパーキンソン病など)でも嗅覚障害が起きると言われています。

専門用語が多くやや難しく感じるかもしれません。ニオイがわからなくなった、といっても発生原因や障害の場所によって異なり、治療方法も様々なのです。

 

嗅覚障害の原因や特徴

嗅覚障害の原因として最も多いのは慢性副鼻腔炎で全体の約半分を占め、次いで感冒後嗅覚障害16%、外傷性嗅覚障害6%と続きます。また国民病とも呼ばれるアレルギー性鼻炎についても嗅覚障害を合併することから、潜在的にかなりの方が嗅覚の低下を経験していると考えられます。

それでは嗅覚障害を起こす代表的な疾患についてもう少し説明しましょう。

慢性副鼻腔炎

慢性副鼻腔炎およびそれに合併する鼻茸と呼ばれるポリープによって嗅覚障害が発生します。

近年は難治性で再発しやすい、好酸球性の副鼻腔炎の患者数が増加しています。好酸球性副鼻腔炎は2015年に診断基準が作成されると共に、厚生労働省によって難治性疾患に追加され注目されています。

治療法としては、抗生物質やステロイド、外科的な鼻茸の除去などがあります。

感冒後嗅覚障害

感冒、いわゆる風邪によって鼻づまりが起きると嗅覚は低下しますが、感冒後嗅覚障害とは、風邪が治った後も嗅覚障害が持続する状態をいいます。

ウィルスによる嗅細胞の変性が考えられていますが、十分に解明されていません。また、男女比は1:4~5とされ、中高年の女性に多く、その理由についても不明です。

回復までに約1年以上と長期間かかることも特徴で、根気よく治療を続けていくことが求められます。

感冒後嗅覚障害については以前にも特集していますのでコチラもご覧ください。https://minnano-kyukaku.com/lab/lab_03/

外傷性嗅覚障害

外傷性嗅覚障害とは交通事故や転落・転倒などで、頭や顔面の外傷が原因となる嗅覚障害です。

鼻を骨折したことによるのか、その後の神経が損傷したのか、中枢(脳)の損傷なのかによって特徴は異なり治療法も異なります。

事故などに関連した補償に際しては、医療機関にて[基準嗅力検査]という嗅覚検査を受ける必要があります。事故

異嗅症

異嗅症は実施に嗅いだニオイの感じ方が今までとは異なる“刺激性異嗅症”と、ニオイを嗅いでいないときにニオイを感じる“自発性異嗅症”に分けられます。

患者さんの訴えとしては“刺激性異嗅症”では「ニオイがこれまでと違って感じる」や「どのニオイも同じに感じる」と表現することが多く、“自発性異嗅症”では「ニオイを嗅いだ後もニオイが鼻の中に残っている」や「突然ニオイがする」といった症状を訴えます。

異嗅症を単独の症状として訴える方は少なく、上記の感冒や外傷などの嗅覚障害に合併することが多いようですので、治療法もその原疾患に準ずることになります。

 

早期発見・早期治療が大事です

みなさんは視力が低下すると眼科に、耳が聞こえなくなると耳鼻科に行かれると思います。しかしニオイがわからなくなったからといって耳鼻科に行く方は少ないと言われています。それはなぜでしょうか。

その要因としては、「それほど不自由さを感じない事」「嗅覚の低下は気がつきにくい事」があると思われます。

嗅覚は私たちの生活に潤いを与えてくれる重要な感覚ですし、腐敗などに気がつくことで身を守ることも出来ます。更に近年では、認知症やパーキンソン病などでも嗅覚が低下することもわかってきており、嗅覚障害は隠れた病気の発見につながる大事なシグナルとして注目されているのです。

是非皆様におかれましては、ニオイに関心を持っていち早く嗅覚低下に気づいていただき、豊かで潤いのある生活をおくっていただきたいと思います。

鼻のニオイをかぐ

 

参考文献

味嗅覚の科学~人の受容体遺伝子から製品設計まで~  斉藤幸子・小早川達  朝倉書店

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