嗅覚研究室
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アレルギー性鼻炎にも嗅覚障害? しっかりと治療しましょう。
2017年4月6日
監修:兵庫医科大学 都築建三先生
春や秋に悩まされている方も多い、スギ花粉症などの「アレルギー性鼻炎」。この「アレルギー性鼻炎」にも嗅覚障害が起きることをご存知でしょうか?
一般的にアレルギー性鼻炎の症状は「くしゃみ・鼻水・鼻づまり」が3大症状とされており、嗅覚障害を気にする方は少ないのではないでしょうか?
実際、アレルギー性鼻炎の患者さんの嗅覚検査をしてみると、嗅覚障害の合併率は21%~67%。それでも、「くしゃみ・鼻水・鼻づまり」の3大症状に隠れて、嗅覚障害に気が付かなかったり、症状が長続きしないことなどから、嗅覚障害を訴える人はあまり多くありません。
アレルギー性鼻炎の嗅覚障害
それではなぜ嗅覚障害が起きるのでしょうか?
鼻の粘膜に花粉などの異物が付着すると、くしゃみや鼻水、鼻の粘膜が腫れることによる鼻づまりが引き起こされます。これ自体は、私たちが持っている生理的な異物排除機構です。しかし、必要以上に反応して不快な症状となれば治療が必要になります。
鼻の粘膜が腫れると、におい分子がにおいを感知する鼻の中の嗅粘膜へ到達できず、においがわからなくなってしまいます。これを呼吸性の嗅覚障害と言います。
アレルギー性鼻炎では嗅粘膜にも炎症が起きているとされ、呼吸性と組み合わさった嗅覚障害と考えられています。
治療方法
アレルギー性鼻炎の治療は薬物療法が基本です。使われるお薬は、鼻噴霧ステロイド薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、抗ヒスタミン薬などの組み合わせが基本となり、症状により適宜増減します。
花粉症では花粉飛散開始時から薬を服用して、症状を和らげることが勧められています。また、日本では2014年からスギ舌下免疫療法と呼ばれる、アレルゲン免疫療法も適応となり、治療の選択肢が広がっています。
アレルギー性鼻炎は増加中
アレルギー性鼻炎の有病率は1998年に29.8%でしたが、2008年には39.4%と、10年間でなんと10%も増加しています。これからも増加が懸念されています。
アレルギー性鼻炎では嗅覚障害に気が付かないことが多いのが特徴です。多くの例はしっかりと治療すれば嗅覚も改善されますが、まれに嗅覚障害が残る場合がありますので、ご注意ください。
監修者プロフィール
都築建三先生
略歴
1996年 兵庫医科大学 卒業
兵庫医科大学病院 耳鼻咽喉科 研修医
2001年 兵庫医科大学 大学大学院 卒業
2001-2003年 米国フロリダ大学 McKnight Brain Institute of the University of Florida (Postdoctoral fellow)
2003年 兵庫県立淡路病院 耳鼻咽喉科 医長
2004年 鷹の子(たかのこ)病院 耳鼻咽喉科 医長
2005年 兵庫県立柏原(かいばら)病院 耳鼻咽喉科 医長
2006年 兵庫医科大学 耳鼻咽喉科 助手
2009年 同 講師
2014年 同 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 准教授
学会及び社会における活動等(所属学会:役職等)
日本耳鼻咽喉科学会 専門医・指導医
日本アレルギー学会 専門医
日本鼻科学会 嗅覚検査検討委員会委員(H19年~H23年)
兵庫県臨床アレルギー研究会 幹事世話人(H23年~)
耳鼻咽喉科臨床学会 編集委員(H24年~)
兵庫県・阪神地区耳鼻咽喉科医会 学術委員(H26年~)
日本鼻科学会 嗅覚障害診療ガイドライン作成委員会委員(H25年~)
兵庫県・阪神地区耳鼻咽喉科医会 学術委員(H26年~)
日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会 評議員(H26年~)
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会 推薦評議員(H28年~)
受賞
平成8年 兵庫医科大学 森村賞 (平成8年3月1日)
第23回日本鼻科学会賞 (平成28年10月14日授賞式)
所属学会
日本耳鼻咽喉科学会
日本アレルギー学会
日本鼻科学会
日本耳科学会
日本頭頸部外科学会
日本耳鼻咽喉科臨床学会
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
日本耳鼻咽喉科感染症エアロゾル学会
Society for Neuroscience
The American Rhinologic Society
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